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司法書士が考える起業の法律知識(1)機関設計について

 スタートアップ支援、エクイティファイナンスサポートを専門としている司法書士の田中あゆ美です。

 今回は、起業家にとって会社を立ち上げる時の最初の関門、会社の機関設計及び会社の設立登記について取り上げていきたいと思います。

 まずは、株式会社の機関設計について見ていくことにしましょう。


株式会社の機関設計


 株式会社の機関設計は、取締役や監査役だけではなく、会計監査人、会計参与などを含めるとかなりのバリ エーションが考えられます。しかしスタートアップ・ベンチャー企業(以下「スタートアップ」)の設立段階ではそれほど複雑な組織にすることはなく、シンプルな組織設計にすることが良いでしょう。スタートアップの場合、株主総会と取締役のみ、あるいは、株主総会、取締役会と監査役という形式にすることが多いです。

 ではこの2つの機関設計の違い、及びメリットとデメリットは何でしょうか。

 ①株主が取締役のみの場合       ②株主が多数存在する場合

    株主総会                株主総会

     |                   |

     |                   | 権限を一部移譲

     |                   ↓

    取締役                 取締役会 ←ーー 監査役

                業務執行状況の報告↑   業務・会計監査

                         |

                         ↓職務の執行の監督

                        取締役


〇メリット               〇メリット

所有と経営が一致            所有と経営の分離

株主総会で全て決定出来る        取締役会で一定の重要事項を決定可能

✕デメリット              ✕デメリット

役員以外の株主が存在する場合は     取締役3名、監査役1名の最低4名必要

重要事項を決定するのに株主総会を    3ヶ月に1回の取締役会開催等

開く必要がある             事務的負担が増加する



 取締役会を設置している会社のことを「取締役会設置会社」と呼びますが、この取締役会設置会社のメリットとしては、株主総会の決議事項のうち、一定事項を取締役会において決議できるようになることが挙げられます。株主総会の権限を一部、取締役会に移せるということです。

 例えば、株式分割を取締役会の決議で行えるようになったり、取締役の競業取引、利益相反取引の承認を取締役会の決議で行えるようになります。

 或いは、取締役会設置会社では、株主提案権を行使できる株主を限定することも可能です。株主提案権とは、会社に対して一定事項を株主総会の目的とすることを請求する権利のことを言います。取締役会非設置会社では、すべての株主が株主提案権を行使することが可能ですが、取締役会設置会社においては、これをある程度制限することができます。

 従って、株主が多数存在するような場合には、会社の迅速な意思決定のために取締役会を会社設立時の段階から設置しておく方が良いでしょう。


 では、デメリットは何でしょうか。


 会社法では、取締役会は取締役3名以上から構成されると定められているため、監査役を含めると役員となる人が最低4名必要であることになります。会社設立当初から参画するメンバーが多いのであれば問題ないですが、必ずしも4名以上の人が始めから揃う訳ではありません。


 また、取締役会設置会社においては、代表取締役及び業務執行取締役として取締役で選定された取締役については、3ヶ月に1度は取締役会にて職務執行状況を報告する義務があります。従って、最低3ヶ月に1度は取締役会を開催しなければならず、また、株主総会の招集を決議しなければならない等、事務的な負担が増加することになります。





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